「”答えがない”のが面白い」HUGEメキシカンレストランの統括料理長、渡辺健一が語るメキシコ料理の魅力と可能性
本場メキシコの料理をそのまま再現するのではなく、日本人の口に合った形へと進化させ、ラテンアメリカの美味しさや楽しさをカジュアルに堪能できるモダンスタイルを確立してきました。そんなHUGEのメキシカンレストランの統括料理長として活躍する渡辺健一に、メキシコ料理の魅力やHUGEの可能性についてインタビューしました。
もともとは吉祥寺のリゴレットにアルバイトとして入ったのがHUGEとの最初の縁でした。そこで働くうちに、HUGE特有の熱気と社長の新川の人間性の魅力に惹かれ、社員になること希望するようになりました。
社員になった後、縁あってHUGEのメキシカンを任されていた中村というシェフに声をかけてもらい、メキシカン一号店のムーチョ(MUCHO MODERN MEXICANO)に移ることに。当時はメキシカンに殊更魅力を感じていたわけではなかったのですが、入ってみたらその面白さが分かり、はまっていきました。
そして兼ねてからの「シェフになりたい」という願いが叶いシェフをやらせてもらうことになったという経緯ですね。
―実際にメキシカンのシェフになってみてどうでしたか?
シェフになったはいいけれど、一度もメキシコに行ったことが無かったので、当時ムーチョでシェフをしていた方の一時帰国のタイミングに合わせて私自身もメキシコを訪れて一ヶ月ほど滞在しました。そこで、タコスの種類の多さ、トルティーヤなどメキシコ料理の奥深さを知り、ますます魅力を感じました。
一方で、日本におけるメキシコ料理の現実も痛感していました。イタリアンやアメリカン、もちろん和食など、さまざまな料理ジャンルがある中で、メキシカンはまだ市民権を得ておらず、自分自身が「メキシコ料理のシェフ」という肩書の中で、何を目指しどこへ向かっていけばいいのか、悩んでいた時期もありましたね。
悩みに呑まれそうになったときは、無心で「良いものを作ろう」ととにかく料理に集中することにしました。日本はメキシコ料理に関する情報がまだ少なく、料理に関する情報収集は英語やスペイン語で検索しておこなうようになっていたのですが、そこで辿り着いたのがサン・ディエゴでした。サン・ディエゴは、アメリカの中でもメキシカンが日常的に食べられていて、一等地には必ずメキシカンがあるような、そんな場所です。本場であるメキシコの料理が良い意味でアメリカナイズドされて、洗練された見た目にも美しい料理が並んでいるのを見て、これだ!と思いました。サン・ディエゴのメキシカンが一筋の光のように差し込んで、模索する自分を引き上げてくれたと感じています。
サン・ディエゴのメキシカンをはじめ、世界のメキシカンの情報から自分の料理を磨いていく中で、HUGEの仲間たちがかけてくれた言葉が、シェフを続ける原動力になりました。「良いお皿作るね」という言葉をもらったり、自分の料理を取り上げて紹介してくれたり、そういった仲間たちの存在、激励があり、悩む中でも前を向いて進み続けられました。本当にありがたかったですね。
メキシコ料理というか、我々がやっているモダンメキシカンは「答えが無い」のが面白さで、魅力だと感じています。日本のマーケットにおけるメキシカンは、まだ根付いたものが無く、新しく開拓されている分野です。現地の料理を忠実に再現する、いわゆる「本格派メキシカン」ではなく、あえて日本人の口や好みにチューニングしたオリジナルメキシカンを開発、提供することで「HUGEのメキシカン」を創造していくのがとても楽しいです。
―HUGEの数あるコンセプトレストランの中でのメキシカンの特徴や魅力は何でしょうか?
やはりメキシカンというとラテンアメリカの陽気な雰囲気、にぎやかで明るくて、というイメージがあると思うのですが、まさにその通りでHUGEの中でもメキシカンは「楽しい・陽気な」という雰囲気を確立していますね。
特にメキシカンレストランはHUGEの中でも外国人のスタッフ割合が高く、海外からのお客様も多くいらっしゃいます。日本にいながら外国のような雰囲気を楽しめて、ちょっとした旅行気分が味わえるような、そんな場所になっていると思います。
私自身HUGEで長年働いているのは、社長の新川に惹かれて、というのが大きいのですが、会社としては「一生懸命がんばることが恥ずかしくない」という雰囲気が好きで、自分に合っていると思っています。
熱量が高く、前向きでポジティブな人が集まっていて、おのおのが常に何かに挑戦しているような、そんな組織なので、いつも良い刺激を受けて互いに高め合っていけるというのが、ここにいる・ここで働く理由になっているかな、と思いますね。
仕事で大切にしていることは「楽しくないと意味がない」というモットーです。自分も相手も、そしてお客様も、みんなを楽しませたいと思って仕事と向き合っています。
だから、常に何か新しいことをやろうと動いている感じですね。10周年だから何をやろうかな、とか、例えば伸び悩んでいる店舗があればどうやって伸ばしていこうか、とか、変化を起こすことを楽しみながら取り組んでいます。
―今後HUGEでチャレンジしたいことを教えてください。
HUGEの初めてのレストランである吉祥寺のリゴレットが好きで、あんなお店をメキシカンでもやってみたいな、と思っています。
うまく言葉で表現するのが難しいのですが、お店の内装、雰囲気、置いてある家具や食器、メニュー、など空間が完成しているというか、ひとつの世界観ができあがっているというか、とにかくとても好きなんですよね(笑)
あとは、今あるお店ももちろん大切にしながら、もっとみんなで大きいことをやりたいな、とも思っています。「大きいこと」と言うと抽象的になってしまいますが、「世界」を視野に入れたチャレンジをしたいです。海外進出や海外出店ということではなく、例えば日本のHUGEレストランが世界の方々に注目されて、それを目的に来てくださるとか、日本旅行の際に立ち寄りたいというお店になるとか、日本国内だけに留まらず、もっと多くの人にHUGEの魅力を知ってほしいな、と。そのために何をして、どうアプローチしていくか、というのはこれから考えて実行していくというところですね。

























