
- 株式会社HUGE 代表取締役社長
- 新川 義弘Yoshihiro Shinkawa
- Profile
- 1963年生まれ。株式会社HUGE(ヒュージ)代表取締役社長。
1982年、福島商業高校卒業後、新宿東京会館(現・ダイナック)を経て、1984年に長谷川実業(現・グローバルダイニング)入社。
1988年、取締役に就任。『グローバルのサービスの確立者』とも言われ、No2として東証2部上場など、同社が日本の外食の代表企業へと躍進するステップに大きく貢献する。
2005年、同社を退職し、株式会社HUGE(ヒュージ)を立ち上げる。
それって、街の資産になっているのか
HUGE(ヒュージ)のレストランは『100年』という言葉がキーワードとなっています。多くの外食の店舗ではコンセプト(業態)や店舗の寿命は3年か5年と言われています。世の中には、新たな業態を企画・開発するクリエーターや、コンセプターの方々が沢山居て、日々、新たなコンセプトをクリエイトしています。これは、外食産業をバリエーション豊かに、楽しくしているのも事実ですが、その業態は1年、2年、3年、10年と、長く続いているかというと、長く息づいているお店は、決して多くありません。
私が前職で新規オープンの店舗を任された時の話です。
そのお店は、デザイン・コンセプト共に非常に良くできたお店で、オープン時には、沢山のお客様にいらっしゃっていただき、厳しい立地条件の中、このようなハードの凝った店舗を建てた事・コンセプトの面白さをお客様より、褒められました。このような、店の『ハード面』に対しては、オープンから2年間、褒めていただけていましたが、店でやっている『ソフト面』(=オペレーション)に関する事は最初の2年間、ほとんど褒められる事はありませんでした。そして、お店がオープンして3年経った頃から『この店のチーム、いいね。』という言葉をいただけるようになりました。
その時、初めて私達のサービスが認められたと思ったのです。
一つの場所に、お店をずっと残すという事は、ハードの力ももちろん必要ですが、その店を動かすスタッフが、目標・目的を持ち、常に店を磨き込んでいかないといけません。いい場所に、いいお店がずっと残っているという事は、そのお店にオペレーション力があるという事に他ならないのです。
私達は、面白い店も、面白い業態も作りますが、一番大切にしていきたいものは、この『オペレーション力』です。
1997年、外食産業は、29兆円のマーケットがありました。けれども、2005年の段階では、24兆円までマーケットが下がってきています。この5兆円は、外食産業以外のどこで消費されているのでしょうか…。
1つは、テーマパーク等のエンターテイメントビジネスが成熟してきて、そちらのマーケットが伸びているという事。また、若年層に多く見られる傾向ですが、インターネットや携帯電話等、コミュニケーションツールでの消費も増えています。また、近年めまぐるしく発展している、中食業態。コンビニエンスストアのお弁当も非常に美味しくなっています。このような産業により、自宅でも手軽に美味しいものが食べられるようになりました。わざわざ外食に行かなくても、他に楽しい事が沢山ある時代になったのです。
けれども、このような要因は、言い訳にしかなりません。
このようなマーケットに消費が移っているという事は、我々、外食産業が、『わざわざ、外へ出かけてまで食事をしたい』というお客様の気持ちに触れる店を多く作っていないのではないでしょうか。
逆に、全国に広がっている、立地に合わせずに単一パッケージで展開し、店舗数を増やしている業態があります。そのような店舗が増えると、わざわざ、その土地・場所まで出向かなくても、全国各地どこでも同じ味を食べる事が可能になります。便利になった一方で、外食で味わう『楽しさ』が減ってしまったのも事実です。
全国各地はもちろん、東京という狭い土地の中でも、その地域・街が持っている文化・特色、望んでいるマーケットはそれぞれ違います。その街が『望んでいる』マーケットにフィットする業態を開発し、その街に合ったお店を作っている人が、多いのかというと、そう多くはないと感じています。
単一パッケージで展開した店舗の売り上げが、下降気味になってくると、「この業態が古くなったので、新しい業態をやってみよう。」と、すぐに業態転換をしてしまっているお店があまりにも多いのではないでしょうか。
これは『あのお店に行って、あの料理を食べよう』と、ストーリーを立ててそのお店に通っていただいているお客様の気持ち(利用動機)をそいでいる事になります。
果たしてそのお店は、街にとってポジディブな存在になっているのでしょうか??
…そのお店は、業態を短期間で変える事で、街を荒らしてしまっているのではないでしょうか。
私達のレストランは、1年、2年、3年…10年と、時間を重ねるごとに、味わいが増す店作りをしていきます。
長い時間を重ね、お客様からは『この土地に来てくれてありがとう。』
私達は『この土地でやらせていただいてありがとう。』
…そのように思える関係を築ける存在でありたいと思います。
そのように思っていただけた時、一軒のレストランは街の価値を向上させる“街の資産”となっているのではないでしょうか。
私達は、街の資産になるレストラン作りをしていきます。